2024年、世界は収拾がつかなくなっている【佐藤健志】
佐藤健志の「令和の真相」50
◆負けたら内戦だ、と上院議員は叫んだ
今回の大統領選、共和党候補はむろんドナルド・トランプ。
しかるにトランプは、2020年の前回大統領選挙でジョー・バイデンに敗れた際、選挙に不正があったとして結果を受け入れず、権力の座にしがみつこうとしました。
2021年1月、支持者が連邦議会を襲撃した際も、ツイッター(現:X)で彼らを賛美しています。
現職大統領でありながら、自国の政治制度の正当性を否定したのですぞ。
結局は退陣に追い込まれたものの、2022年にはSNS「トゥルース・ソーシャル」で、「(2020年大統領選挙の結果を肯定するような)規則、規制、条文の類は、たとえ合衆国憲法に書いてあろうと廃止すべきだ」と主張、「憲法の敵」(=国賊)と批判されました。
ちなみにこの表現を使ったのは、バイデン政権、つまり民主党側の人間ではなく、当時、共和党下院議員だったリズ・チェイニー。
ジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領を務めたディック・チェイニーの娘です。
駄目押しというべきか、2024年5月、トランプは刑事裁判で有罪の評決まで受けている。
普通なら再起不能となって当たり前でしょう。
ところがお立ち会い。
トランプは消えるどころか、候補指名を楽勝で獲得してしまう。
その直前、ペンシルベニア州で開かれた選挙集会では暗殺未遂事件が発生したものの、支持者の中には「トランプが軽傷で済んだのは、神の加護を受けているからだ」として、彼を救世主のごとく見なす風潮まで生じました。
国賊にして犯罪人、かつ救世主!
みごとな「何でもあり」ではありませんか。
ただし民主党も負けてはいない。
こちらは当初、現職のジョー・バイデンが再選をめざしていたわけですが、年齢や健康状態への懸念から支持が高まらないのを見て、7月21日に選挙戦からの撤退を表明、副大統領のカマラ・ハリスを代わりに推しました。
8月はじめ、ハリスはオンライン投票で候補指名を獲得、同国初の女性大統領(しかも黒人系にしてアジア系)をめざすことになるのですが・・・
ハリスは民主党の予備選挙に出馬していません。
アメリカの大統領選挙は、予備選挙を勝ち抜いた人物が、党の候補として指名されるのがならわしですから、バイデンからハリスへの交代には、いささか無理筋のところがある。
のみならず、民主党が発表した政策綱領は、バイデン撤退の前につくられたまま更新されていない。
「バイデン大統領の二期目では」という表現が、20回近く登場するのだとか。
これまた、なりふり構わぬ「何でもあり」。
普通ならバイデン以上に支持されなくて当たり前でしょう。
ところがどっこい。
ハリス人気はしっかり盛り上がり、ほとんど確実視されていたトランプ復活を脅かすにいたります。
この共和党候補にして、この民主党候補あり!
まさに「仁義なき戦い」ですが、こうなると収拾がつかなくなることは容易に想像される。
負けた側が選挙結果を受け入れず、暴力に訴える事態になるのではないかということです。
なにせ選挙中から、トランプの暗殺未遂が繰り返し生じる始末。
オハイオ州選出の上院議員ジョージ・ラング(こちらは共和党なのでトランプ支持です)など、最初の暗殺未遂の直後、副大統領候補J・D・ヴァンスの支援集会でこう叫びました。
【戦いだ、戦いだ、戦いだ、戦いだ、戦いだ! 時間はあるぞ、立ち上がれ! いいか、今、行われているのは国の魂を賭けた戦いだ。(中略)もしこの選挙に負けたら、国を救うための内戦が必要になる。そしてもちろん、アメリカは救われる! これは人類史上最大の政治的実験なんだ!】
選挙に負けたら、内戦で勝つ!
「すべてが思い通りになるはずなのに、
アメリカの政治学者、バーバラ・ウォルターが2022年に刊行した著書『アメリカは内戦に向かうのか』でも、カマラ・ハリスの大統領当選を引き金に内戦が始まると予測されていることを付記しておきましょう。